「僕の1本」

こんにちは、ブログ担当の tK です。
突然ですが、まずは名前の話から少しだけ。
もともと僕は “tk” と名乗ろうと思っていたんです。
ですが、ブログを始めるにあたって、松吉氏が「tTとかtHみたいに“Kは大文字のKの方がモデルっぽくて良くない?」
と提案してくれました。
その瞬間、僕の中でなにかが“ガチャン”とはまった気がしました。
「なるほど!!」と。JUCIEの一員になれたような気がして本当に嬉しく、とても気に入ってまして、最近はゴルフ場でのサインは基本「tK」となっているtKです。


皆さんの“1本”って何ですか?
さて、今日のテーマは「僕の1本」。
ゴルフクラブの話って、人それぞれのこだわりや楽しみ方があるので、何が正解とはないですが、その中でも「絶対的に信頼している1本」はお持ちですか?
・困ったらとりあえずこのクラブを選ぶ
・緊張した場面でも、何とかなりそう
・このクラブだけは不安をあまり感じない
そんな存在です。
人によってはドライバーだったり、ユーティリティだったり、はたまたウェッジやパターだったり。
「この子がいるから大丈夫だ」
そもそも、そんな一本に巡り合える事自体、幸せだと思うんです。
使い始めはとても良いけど、使っていく内に「あれ?」となってしまうクラブや、直ぐに飽きてしまうクラブもあったりと。


僕の“1本”は、初めてのJUCIE
そんな僕の“1本”は、初めて手にし、初めてコースで使い、初めて「なんだこれ…」と衝撃を受けたクラブ。
それがtHウェッジ 6010K です。このモデルについては、他の記事でも触れていますが、この子の存在は、僕の中で特別です。
“初めて本気に愛した相手”とでも言いべきクラブです。

構えた瞬間に流れ込む“言葉に出来ない安心感”
6010Kを構える瞬間って、なんというか…
“なんか上手くいく気がする”感覚があるんです。
丸み。優しさ。
だけど甘えすぎない絶妙な感じ。
メッキの色合いも作用しているのかもしれませんが、このクラブには「大丈夫だよ」と言ってくるような雰囲気があるんです。
60°なのに“暴れない”稀有な存在
60度のウェッジって聞くと、「やさしいけど距離が出ない」「上がりすぎて扱いづらい」「スピンだけ強くて不安定」みたいなイメージがまだ多くの方にはあるんではないでしょうか。
でもこの6010Kは全然違う。
上がるけど、上がりすぎない。
しっかり飛ぶけど、飛びすぎない。
スピンは効くけど、効きすぎない。
“ど真ん中”の極み。

芝が薄いところでも、沈んだところでも、「チョン」と打つだけで“フッ”と転がっていってくれる安心感も備えている。

ど真ん中にある“高次元のど真ん中”
色んなウェッジを打ってきましたが、無難なウェッジって世の中に山ほどあるんです。
“普通には使える”レベルは。
でも6010Kには、そういうレベルじゃない“ど真ん中”があります。
これって本当に難しいことだと思うんです。

車でいえば、メルセデスAMGやBMW Mシリーズ。
普段は普通に走れるのに、アクセルを踏めば牙をむく。
でも、それを“普通に扱える”ように感じさせる設計。
6010Kには、その匂いがあると思います。

極端じゃないのに、極端なほど優れてる
スイングで考えても、極端な動きは結構イメージしやすいし、簡単なんですよね。
・思いきりフックを打つ
・思いきりスライスを打つ
・脱力しすぎる
・力みすぎる
こういう“極端な”イメージはしやすい。
でも、本当に難しいのは“絶妙な中間”。
どっちにも偏り過ぎることなく“普通にショット”すること。
クラブも同じなんじゃないかと思います。
6010Kはこの“普通の中に潜む極意”を徹底的に押さえている。
これは使うほど分かる。
「あ、バランスがとんでなく異常に良い」って。


最後に
皆さんにもきっとある“1本”。
クラブの性能というより、そのクラブを持った瞬間に蘇る記憶や経験。
そういう“物語のある1本”って、やっぱり特別じゃないでしょうか。
そして、もしこの6010Kがいつか誰かの“1本”になったら、それだけで僕は嬉しいですし、きっと松吉氏も、静かにニヤッと喜ぶと思います。
そんな僕の“愛してやまない一本”のお話でした。

ウェッジ選びの常識をリセットしてもよいのでは? -後編-

前回、ソール性能は単純なソール角度という1次元的な指標ではなく、厚みや幅などの2次元的、さらにはトゥ・ヒール方向での変化など3次元的に判断してほしいというような話をしました。
今回は、その先にある4次元的な性能を意識すると、自分に合う、もしくは、なぜ自分に合わなかったのか、などもっと納得できるウェッジ選びができるのではという内容について話していきたいと思います。


私の考えるクラブ設計の4次元とは?
一般的に3次元とは縦×横×高さで表せる空間のことです。私がゴルフクラブを設計するときは、この空間にどのようなサイズと重さでできているかという物理的な制約の中で、どれだけ希望のショットが打てるようになるかということを、形状や重心性能などを考慮して実現していきます。
そこに、もう1次元加わることになるのですが、一般的な解釈としては、4次元目の軸は時間とされています。すごく簡単に言うと「同じ物体でも時間が異なれば位置を特定できなくなる」というような解釈からです。では、クラブ設計においてはと言うと、単純には使う方のゴルフをしてきた時間の長さ(経験・知識)。そこからくるクラブに対する要求が変化・細分化されていくことを、しっかりと意識して見極めていくことだと考えています。
単純なことでいうと、たとえばアップライトになっているクラブを構えたとき、クラブ通りに手を上げて構える人と、自分の心地よい位置に構えて、トゥを浮かす人。この違いだけでも結果は大きく変わってしまいます。そういった違いが個性なのか経験からくるものなのか、設計しているクラブのターゲット像はどちらの傾向なのか?などを考慮して設計をしたりしています。


佐々木朗希選手とコーチの会話
先の例はわりと単純な内容ですが、それよりももう少し深い部分の経験によるゴルファーの道具の使い方の違いを、いつも妄想に近い考察をしているのですが、そんな考察を具体的に表現していると感じたことがありました。
メジャーリーガーの佐々木朗希選手が、一時期調子を落としていて、そこから復活をした際のインタビュー記事でコーチとのやり取りを話していたのですが、その中で、「どの球種が投げやすいか?」「痛みはあるか?」などという現状確認と同時に、「小学5年生のくらいの時にコーチから言われたことで、守り続けていることはあるか?」と聞かれていたことです。まさにこれが私がクラブを設計する際、またはクラブのおススメを聞かれた際などにさりげなく確認をしたりしていることにとても近く、メジャーリーグの最先端でこのようなことを意識して調整を行っていることに非常に感銘を受けました。


ゴルフ歴の長いゴルファーに合うウェッジ
具体的にお話しすると、ウェッジショット一つをとっても、それがベストな使い方ではないことも多いとはいえ、ゴルファーがそれぞれいつかのどこかのタイミングで、「これだ!」的なひらめきとともに自身の成功体験として大切にしている打ち方を無意識にしているのではと考えています。さらには、練習量も多く、クラブを頻繁に変える方は、そのひらめきを上書きしていればよいのですが、積み重ねている場合も多く、気が付いたときには今使っている道具では必ずしも正解ではない動きを、自身のナイスショットのイメージとして、結果的にミスショットを繰り返してしまうことも多くありそうです。
代表的な例としては、「バックスピンを使って止めるウェッジショット」があります。これは、その時使用していたボール、グリーンの柔らかさや傾斜、芝や小石の噛み具合によって偶然生まれたショットを、常に再現したいと思ってしまいがちです。その思いが強くなると、成功する確率が低いショットへの過度の期待から最終的にイップスになってしまうこともあります。
そんな時に思い出していただきたいのが、ご自身が一番練習をしていた時、無意識にひらめいた打ち方、その時にしていたウェッジショットなどです。無理にスピンショットを打つのではなく、もっとシンプルに寄せていたかもしれません。ボールが全然違ったかもしれません。そんなゴルファーのことを思いながら設計をしたのが、ジューシーtHウェッジシリーズです。このモデルはいわゆるスピン系のウェッジが出る前にゴルフを覚え、多く練習をしていた方々を想定しています。ただその頃のウェッジを再現するのではなく、その頃のウェッジを使っていた人がシンプルなウェッジショットを打ちやすいように設計することを心掛け、構えやすさはしっかりと近年のトレンドを押さえつつ安心できる形状。そして、少し開いて使うことで強烈なスピンもかかる楽しさ。その結果、ゴルフ歴が長い方はもちろん、始めて間もない方でもシンプルに使いやすく良いウェッジになったと思っています。


ひらめきの上書きも大切
その逆に、無意識なひらめきが今打ちたいショットに合っていない場合も多いので、その時は、今ご自身がどのようなショットを打ちたいのかを思い浮かべ、そのショットがやりやすいウェッジは何か?で選ぶことで、最初は少し戸惑ったとしても、新しい「これだ!」というひらめきを得られれば、それは道具とともに進化していく楽しいゴルフライフになると思います。