
皆様、こんにちは。ジューシーmatsuこと、ジューシー株式会社代表の松吉 宗之です。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、2019年9月からFacebookアカウントにて、ジューシーmatsu名義でゴルフクラブの性能や設計者の日頃の思いなど、かなりマニアックな内容を書かせていただいていましたが、今後はこの場所に移動して、いろいろな情報を発信していきたいと思います。
発想の手抜きをしない
初回は、改めてジューシー株式会社を立ち上げた想いについてです。
私がゴルフ業界のキャリアをスタートしたのは、世界的に見てもかなり特殊な“ゴルフクラブ設計会社”でした。自社ブランドの設計だけではなく、多岐にわたるゴルフクラブメーカーのクラブを陰で設計している会社で、その創業者である恩師はクラブ性能を重心位置でとらえ、数値化することで評価・設計するという、今ではわりと当たり前に感じられるようなことのパイオニア的存在の方でした。そんなスタートでしたから、当然、重心性能を設計することでクラブ性能を作り上げることを得意としていますが、それ以上にもっと大切にしている想いがあり、それは恩師との何気ないメールのやりとりの中で書かれていた「発想の手抜きをしない」という言葉です。キャリアが長くなるほど、同じような仕事が増え、それを経験で解決し、失敗のない無難な仕事をしてしまいがちです。特に良い成功体験を得ると、そこから抜け出ることを恐れ、お決まりのパターンのようになってしまいます。そんな時に、ささいなことについてもこの言葉を思い出し、開発者として常に今この手法は良い選択か?など、その手法を初めて考えたときに立ち返り、より良い選択を考え続けています。
あなたに合う新しい性能を
そんな思考の中での大きな決断が、ジューシー株式会社を立ち上げることでした。今までにない性能のゴルフクラブを開発し続けていくという設計哲学を学んでおきながら、自社に限らずゴルフ業界全体がいつの間にか、経済活動のサイクルに合わせた無難なクラブの開発を要求される環境になっているということにモヤモヤした気持ちを抱きました。
マーケティングやゴルファーの皆様の声を多く聞くことで、“こんなクラブが欲しい”とか“あのメーカーのクラブと似た性能を”という思いを取り入れ、真摯(しんし)に応えていく開発。売上をしっかりと意識して計画を立てていくことは、利益を求める会社として当たり前ですし、決して悪いことではありません。しかし、私が培ってきたゴルフクラブ設計は、できなかったことができるようになる、商品ではなく道具としてのゴルフクラブ設計でしたので、1社ぐらいはそのような想いのもと、自由に設計開発をし続ける会社があっても良いのではないか、そうすることで少しでもゴルフクラブの進化や発展に役立てるのではないかと考え、ジューシー株式会社を設立いたしました。
“こんなクラブがあるとは思わなかった”や“どこのクラブにも似ていない”と思っていただけるような、そして使ってみたらこれが自分に合った性能だったんだと思ってもらえるような、未知のワクワクが詰まったゴルフクラブをこれからも生み出していきたいです。
難しいモデルではなく良いショットが打ちやすいモデル
ジューシーブランドを始めるにあたり、当初はウェッジ設計から少し離れたいとも思っていました。今まで単品ウェッジだけでも30機種以上の設計を行い、番手で考えると数百のウェッジを生み出してきました。そのすべてでフェース形状ですら同じものはなく、常に何もないところから3D空間の中に描いてきました。その積み重ねが時には重く感じることもあり、また追い求めてきた性能が本当にゴルファーの役に立ってきたのだろうか?と自問していました。そんな矢先、長年お世話になってきたプロゴルファーの方々から、自分たちの使いたいウェッジがなくなってしまうのはとても困る。なんとか新しいものを作ってもらえないか?とのご要望を多くいただきました。さらには、ボールやコースセッティング・クラブセッティングの変化から、もっと良いショットが打ちやすいウェッジが欲しいとの要望をいただき、その要求はプロそれぞれバラバラだったり、意外と共通していたりしました。それならば、ゼロベースでプロそれぞれの要望に細かく的確に、そしていつでも何度でもすぐに対応できる方法がないかを検討して生まれたのが、後の“tTウェッジ”です。当時はパター以外では珍しかった削り出し製法で作ることで、さまざまなモデルを正確に何度でも供給することができるようになり、それまで以上にプロゴルファーの方々に信頼してもらえるようになりました。このような経緯でプロのパーソナルモデルウェッジとしてtTウェッジが生まれたのですが、それぞれのプロの要求はそのすべてが、“難しいもの”ではなくもっと簡単にミスなく望んだショットが打てるクラブですので、このtTウェッジは決して難しいモデルではなく、イメージするショットに合わせて選んでいただければ、とても打ちやすい性能になっていると思います。